鹿児島の高校入試、「定員割れだから大丈夫」ではありません——高校無償化で変わったことと、この秋の備え
二学期も後半に入り、三者面談や実力テストの結果を前に、「そろそろ進路を決めなければ」という空気が家庭に入ってくる時期になりました。学校に行けていない期間があるお子さんや、発達に特性のあるお子さんの場合、この時期の話し合いは親御さんにとって特に重くなりがちだと思います。
ただ、2026年度から高校の学費のしくみが大きく変わりました。選択肢の幅が、去年までとは違います。今年のうちに知っておくと、お子さんと落ち着いて話せることが増えるはずです。
そしてもう一つ。制度の話より先に、私たち自身のご案内を訂正させてください。ここがこの記事でいちばん大事な部分です。
【重要】昨年までの私たちのご案内を訂正します
昨年までの進路のご相談で、私たちは「その学校は定員割れしているので、合格できる可能性は高いと思います」というお話をしてきました。募集定員に対して志願者が少なければ席は足りている。そう考えるのが自然でしたし、実際に長くそうお伝えしてきました。
けれども、それは正確ではありませんでした。
鹿児島県内では、定員が埋まっていないのに不合格になる「定員内不合格」が実際に出ており、しかも増えています。今年3月の入試では、募集定員80人に対して受検者が47人だった県立高校で、4人が不合格になりました。席は37人分、空いたままです。これは県教育委員会が公表している数字で、この記事の後半でそのままお示しします。
倍率が1.0を下回っていることは、合格の保証ではありません。私たちの説明が、ご家庭の判断材料を不十分なものにしていたかもしれません。申し訳ありません。
今年から、私たちは「定員割れだから大丈夫」という言い方をしません。かわりに、倍率とは別に何を確認しておくべきかを、具体的にお伝えしていきます。とくに、学校に行けていない期間があるお子さんや、面接での受け答えに時間がかかるお子さんの場合、ここは軽く見ないでいただきたいところです。
その具体的な内容は後半にまとめました。先に、今年変わった学費のしくみから整理させてください。進路の選択肢そのものが広がっているので、そこを押さえてから受験の備えに入るほうが、話が立てやすくなります。
変わったこと——所得制限がなくなり、私立は年45万7,200円まで
これまでの「高等学校等就学支援金」は、私立高校に通う場合、世帯年収910万円未満が対象で、支給上限は年収590万円未満の世帯で最大39万6,000円でした。2026年度からはこの所得制限が撤廃され、すべての世帯が対象になりました。あわせて私立高校(全日制)の支給上限も年45万7,200円に引き上げられています。授業料がこの範囲内であれば、実質的に負担がなくなる計算です。
対象も広がりました。従来は新入生が中心でしたが、現在は在校生(高校2・3年生)も、あらためて申請すれば対象になります。申請は入学後に「e-Shien」というオンラインシステムを通じて学校経由で行います。
この変更が、進路選択の前提を変えました。これまで「私立は経済的に難しいから」と最初から外していたご家庭が、あらためて検討できるようになったということです。少人数の学級、面倒を見てくれる先生の数、通学のしやすさ——そうした条件で学校を選べる余地が、確実に広がっています。
見落としやすいこと——無償になるのは「授業料」だけ
一方で、ここは押さえておいてください。無償化の対象は授業料です。それ以外の費用は、これまでと変わりません。
文部科学省の令和5年度の調査では、私立高校の年間学習費は全国平均で合計83万2,650円でした。このうち授業料は27万9,170円で、残りは入学金等8万290円、学校納付金等12万7,346円、通学関係費13万6,790円、修学旅行費等6万2,778円などです。つまり、授業料が実質無償になっても、制服代や教科書代、施設整備費、通学費、修学旅行の積立といった費用は家計から出ることになります。
もうひとつ、時期の問題があります。就学支援金は保護者に直接振り込まれるのではなく、受給資格が認定されたあと、学校が生徒に代わって受け取り授業料に充てるしくみです。認定は早くても夏頃になることが多いため、それまでの授業料をいったん立て替えるケースが少なくありません。入学前後にまとまった現金が必要になる、という点は先に見ておいたほうが安心です。
公立を第一志望にして私立を併願する場合は、私立の入学手続時納入金を公立の合格発表後まで待ってもらえる「延納制度」があるかどうかも、各校の入試要項で確認しておきたいところです。
なお、授業料以外の費用については、低所得世帯を対象にした「高校生等奨学給付金」という返済不要の制度があり、就学支援金と併用できます。都道府県独自の上乗せ制度がある場合もあるので、鹿児島県の最新の案内もあわせて見ておいてください。
鹿児島で起きていること——「定員割れ」は合格の保証ではありません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
鹿児島県の2026年度公立高校入試は、最終出願倍率が0.77倍で過去最低を更新しました。前年度を0.04ポイント下回り、出願者は521人減。132の学科が定員割れという状況です(最高倍率は鹿児島玉龍の1.72倍)。少子化に加えて、私立の授業料実質無償化や推薦入試の合格内定者の増加が影響した可能性があると県教委は見ています。実際、県内の私立高校では普通科の人気が上がっている傾向があります。
この数字を見れば、「定員が余っているのだから、とりあえず出願すれば入れるだろう」と考えたくなります。冒頭でお詫びしたとおり、私たち自身が昨年までそう説明していました。学校や塾から同じ説明を受けることもあるかもしれません。
けれども、そうとは限りません。
同じ2026年度、鹿児島県内の公立高校で定員内不合格が190人出ています。3年前の約3倍です。これは2026年9月の県議会で明らかになった数字です。定員内不合格とは、募集定員に達していない——つまり席が空いているのに、不合格になることです。そして、2次選抜でも合格できなかった生徒の大半が通信制へ進学しているとされています。
実際の数字で見てみます——県立鹿児島東高校(2026年度入試)
抽象的な話ではありません。今年の3月に行われた入試で、鹿児島市の県立鹿児島東高校(普通科)はこうなりました。すべて鹿児島県教育委員会が公表している数字です。
| 募集定員 | 80人 |
| 最終出願者数 | 49人 |
| 受検者数 | 47人 |
| 合格者数 | 43人 |
| 第二次選抜の募集定員 | 37人 |
定員80人のところに、受検したのは47人。倍率は0.59倍です。定員の半分ちょっとしか受けていません。
それでも、合格したのは43人でした。受検した47人のうち4人が不合格になり、37人分の席は空いたまま2次選抜に回されています。
鹿児島東高校は普通科のみの高校で、募集定員が120人以下のため一定枠がなく、学区外からも出願できます。
同じことは他の学科でも起きています。薩南工業(機械)は8人が受検して合格5人。霧島(機械)は6人が受検して合格4人。福山(普通)は17人が受検して合格15人。いずれも定員40人の学科で、席は大きく空いたままです。人数が少ないだけに、「受けた人がほぼ全員落ちなかった学科」と「数人が落ちた学科」の差は、外から見ただけでは分かりません。
この4人が、なぜ不合格になったのかは公表されていません。学力検査の点数なのか、面接なのか、調査書なのか。推測で書くわけにはいきません。ただ、「倍率0.59倍でも不合格は出る」という事実だけは、確かです。
私たちが昨年まで「定員割れなら大丈夫」とお伝えしていたのは、この数字を見ていなかったからです。倍率の発表は毎年よく報じられますが、受検者数と合格者数を並べて見る機会は、あまりありません。並べてみると、こういうことが起きています。
なぜ「席が空いているのに落ちる」のか
これは鹿児島だけの話ではなく、全国的に長く議論されてきた問題です。
文部科学省が2025年12月に公表した「令和7年度高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査」によると、全国の公立高校で定員内不合格となった人数は延べ1,770人、これを出した学校は549校ありました。前年度(2,029人)より人数は減っていますが、受験者数自体が減っているなかで、定員内不合格を出した学校数は549校と前年度から変わっていません。
そして注目していただきたいのは、県による差が非常に大きいということです。同じ調査で、「原則として定員内不合格を出さないよう取り扱っている」と回答した都道府県が26ある一方、「各校長の判断に委ねられている」と回答した県が17ありました。定員内不合格が年間ゼロの都道府県も10あります。つまり、席が空いているときにどうするかは、制度として全国一律に決まっているわけではなく、地域と学校の判断に委ねられている部分が大きいのです。
国の姿勢も、はっきり一方向ではありません。文科省は2026年6月に都道府県へ出した通知のなかで、合否の判断は各校長が行うものであり「定員内不合格自体がただちに否定されるものではない」としています。同時に「学ぶ意欲のある生徒に学びの場が確保されることは重要」だとして、定員内不合格を出さないよう取り組んでいる教育委員会の例を参考にするようにも求めています。問題としては認識されている。けれども、最終的な判断は各高校の校長に残っている——これが現在の状況です。
不登校や発達に課題のあるお子さんの場合、ここを軽く見ないでください
この定員内不合格という問題は、もともと障害のある生徒の高校進学を阻む壁として、保護者の団体が二十年以上訴えてきたテーマです。背景にあるのは「適格者主義」と呼ばれる考え方——入学させる前に「この生徒は高校でやっていけるかどうか」を選抜で見る、という発想です。この発想が残っているかぎり、席が空いていても「本校では難しい」という判断が起こりえます。
学力検査の点数、面接での受け答え、調査書の記載。そのどれをどう評価するかは各校の判断で、基準は公表されていません。ですから、欠席が多かった時期があるお子さんや、面接での受け答えに時間がかかるお子さんの場合、「倍率が低いから安心」という前提は置かないほうがいい、というのが正直なところです。
念のため申し添えると、鹿児島の190人の内訳は公表されておらず、「不登校だったから落ちた」と因果を断定できるものではありません。私たちにもそこまでは分かりません。ただ、分からないからこそ、備えておくほかありません。2次選抜でも合格できなかった生徒の大半が通信制へ進んでいるという事実は、進路が「選んだ結果」ではなく「残ったところ」になってしまっている可能性を示しています。そうさせないために、秋のうちに動いておきたいのです。
この秋、具体的にやっておきたいこと
まず、志望校が欠席の状況をどう見るのかを、中学校の先生を通して具体的に確認してください。「不登校だと不利ですか」という漠然とした質問ではなく、「三年生で〇日欠席があるが、この学校の選抜ではどう扱われるか」という形で聞くほうが、実のある答えが返ってきます。学校によって答えは違います。
次に、受験上の配慮が必要なら、申し出の締め切りを今のうちに確かめてください。別室での受験、検査時間の延長、問題文へのルビ振り、面接方法の調整など、必要な配慮は事前の申請が前提になります。出願直前では間に合わないことがあり、秋から初冬に動く必要があります。これは善意でお願いすることではなく、障害者差別解消法にもとづいて学校側が対話して検討すべきものです。負い目を感じる必要はありません。
そして、合格できなかった場合のルートを、先に全部並べておいてください。2次選抜、私立の後期日程、通信制、定時制。これを事前に知っておくことと、3月に急いで探すことは、まったく違う体験になります。お子さんに見せるかどうかは別として、保護者の側では地図を持っておいていただきたいのです。
鹿児島はもともと推薦枠が少なく、一般入試で勝負する前提の県です。2027年度(令和9年度)の日程は、推薦入学者選抜が2月2日、学力検査が3月3日・4日、合格者発表が3月12日と発表されています。残り時間は、思っているより短いかもしれません。
なお、こうした状況に置かれているお子さんは、決して少数ではありません。文部科学省が2026年9月に公表した調査では、発達障害等のある児童生徒の不登校率は13.26%で、全児童生徒(3.71%)の約3.6倍にのぼりました。中学校段階では25.13%です。同じ心配を抱えているご家庭は、同じ学年に必ずいます。
通信制を「落ちたときの受け皿」にしないために
先ほどの数字が示しているのは、通信制が結果として消極的な選択肢になっている、という現実です。ここは丁寧に考えたいところです。
家庭教師ステップが全日制をまず検討していただきたいと考えているのは、学力の問題ではありません。毎日決まった時間に人の中へ出ていくこと、思い通りにいかない相手とやりとりすること、行事のなかで役割を持つこと——そうした経験が、自立する力やレジリエンス、人と関わる力を育てる場面になるからです。三年間その環境にいられるかどうかは、卒業後の選択肢の広さに関わってきます。
そのうえで、お子さんの状態によっては通信制が前向きな選択になることも、はっきり申し上げます。家から出ることが長く難しい状態が続いている場合、医療機関で診断がついて治療を優先すべき段階にある場合、集団のなかにいること自体が心身の負担になっている場合——そういうときは、まず回復できる場所を選ぶことが最優先です。通信制やサポート校で自分のペースを取り戻してから、次に進んだお子さんを私たちは何人も見てきました。避けたいのは、「不合格だったから仕方なく」という形で選ぶことです。選ぶなら、納得して選びたい。それだけのことです。
選択肢は広がっています。そのうえで、備えてください
ここまで厳しい話が続きましたが、今年の変化そのものは前向きなものです。学費の前提が変わったことで、候補に入れられる学校は確実に増えました。私立も含めて通える範囲の学校を一度書き出して、授業料以外にいくら必要なのか、入学前にいくら立て替える必要があるのかを、学校説明会や入試要項で確かめてみてください。去年までなら「うちには無理」と外していた学校が、現実的な選択肢になっているかもしれません。
そのうえで、選抜で何が見られるのかを確認しておく。この二つはセットです。選択肢が広がったことと、合格が保証されないことは、両立します。
お子さんとの話し合いは、うまく進まない日もあると思います。それでも、選べる範囲が広がったという事実は、伝える価値があります。「行けるところ」ではなく「行きたいところ」から話を始められるだけで、空気は変わります。
ご相談ください
不登校・発達障害専門家庭教師ステップでは、学校に行けていない期間があるお子さんや、発達に特性のあるお子さんの進路について、ご家庭ごとの状況をうかがいながら一緒に考えています。今の学力からどこを目指せるのか、欠席の多さが受験にどう影響するのか、何から手をつければいいのか。判断に迷っておられることがあれば、遠慮なくお聞かせください。
対面での指導は鹿児島県内、オンラインでの指導は全国にご対応しています。まずは現状をうかがうところから始めさせてください。
出典
- 文部科学省「高等学校等就学支援金」制度(2026年度改正)/高等学校等就学支援金オンライン申請システム e-Shien
- 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」
- 文部科学省「令和7年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査(公立高等学校)」(2025年12月26日公表)
- 文部科学省「発達障害のある幼児児童生徒に対する就学前からの切れ目のない支援体制構築事業」報告書(2026年9月公表)
- 鹿児島県教育委員会「令和8年度公立高等学校入学者選抜学力検査最終出願者数」「同 受検者数」「同 合格者数及び第二次入学者選抜の募集定員」「令和9年度鹿児島県公立高等学校入学者選抜日程」
- 鹿児島県「鹿児島県公立高校 各学校案内」
- 南日本新聞デジタル「【速報】鹿児島の公立高校入試、最終出願倍率は0.77倍で過去最低」
- 鹿児島県議会(2026年9月17日)における定員内不合格に関する答弁(奄美新聞・NHK報道)
- 中国新聞デジタル「定員割れなのに不合格、広島県内の公立高校148人」(文部科学省2026年6月通知の内容について)
- 障害児を普通学校へ・全国連絡会「文科省定員内不合格調査(4年目)の公表を受けて」(会報2026年2月号)
- 進研ゼミ高校入試情報サイト「2026年度の私立高校授業料無償化・授業料以外の費用・公立高校併願の注意点」
※制度や日程は変更される場合があります。手続きの詳細は、必ず在籍校および鹿児島県の最新の案内でご確認ください。
カテゴリー: 不登校、発達障がいの受験情報
投稿日:2026年09月29日