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職人が稼げるAI時代、求められるのは「体」と「生活の力」——不登校の子が取り残されないために

「自分の努力次第で1000万、2000万に」。10月1日に配信された静岡放送のニュースで、建設会社で働く2年目の若手社員が、資格を取って年収を上げていく見通しをこう語っていました。現場で体を動かして働く、いわゆる「ブルーカラー」の仕事が見直されていて、若手で年収1000万円も夢ではなくなってきている、という内容です。

明るいニュースです。けれども私たちは、このニュースを、不登校のお子さんを持つ保護者の方にこそ読んでいただきたいと思いました。そして、少し耳の痛い話をさせてください。

 

 

不登校に「寛容」な時代になりました

 

ここ数年で、不登校をめぐる空気は大きく変わりました。国も「学校に行くことだけが正解ではない」という方針をはっきり打ち出し、フリースクールや通信制、オンラインの学びなど、多様な学び方が推進されています。「無理に行かせなくていい」「まずは休ませて」という言葉も、すっかり広まりました。

この変化には、よい面がたくさんあります。追い詰められていた子どもが、安心して休めるようになりました。保護者の方が「うちの育て方が悪かった」と自分を責め続けることも、以前より減ったと思います。

ただ、毎日不登校のお子さんと向き合っている私たちは、別の心配も感じています。「見守る」という言葉が、いつのまにか「今の状態のままでいい」という意味にすり替わっていないだろうか、ということです。

 

 

世界のほうは、大きく変わっています

 

ニュースが伝えていたのは、AIの普及で事務系の仕事が減っていくと言われるなか、人の手と体を使う仕事の価値が上がっている、ということでした。建設・土木関連の職種では、月給が過去6年間で1.5倍になっています。人手不足は全国的なもので、厚生労働省のまとめでは、来年3月に高校を卒業する生徒への求人倍率は3.60倍(2026年7月末時点)。働き手を求める声は、これからも強くなっていくでしょう。

ここで考えていただきたいのは、こうした仕事に共通して求められるものです。朝決まった時間に現場に出ること。一日立って、体を動かし続けること。暑さや寒さのなかでも作業を続けること。そして、職場の人と声をかけ合いながら働くこと。資格や技術は入ってから身につけられますが、その前提になる体力と生活のリズムは、急には身につきません。

ブルーカラーの仕事に限った話ではありません。介護、医療、物流、販売、接客——人の手が必要な仕事の多くは、同じものを求めています。AIに置き換えられにくい仕事ほど、体と人とのかかわりを使う仕事だと言ってもいいかもしれません。

 

 

学校に通う毎日が、体力の土台をつくっていた

 

学校に通っていると、意識しなくても体を動かしています。朝起きて身支度をし、通学路を歩き、教室を移動し、体育で走り、部活で汗を流し、行事の準備で立ち働く。これが毎日、何年も積み重なって、働くための体力の土台になっていきます。

不登校の状態が続くと、この積み重ねがほとんど途切れてしまいます。家で過ごす時間が長くなれば、一日に歩く歩数は大きく減ります。昼夜が逆転すれば、朝に体を起こすこと自体が難しくなっていきます。自宅学習が中心の通信制の場合も、スクーリングの日以外は家で過ごすことが多く、体を動かす機会を意識してつくらなければ、状況はあまり変わりません。

体力は、気持ちとも深くつながっています。体がついてこないと、「行ってみようかな」と思えた日にも一歩が出ません。少し動いただけで疲れてしまう経験が重なると、自信も削られていきます。体力が落ちることで、外に出るハードルがさらに上がる。私たちは、この悪循環に入ってしまったお子さんを何人も見てきました。

 

 

20歳の時点で、正社員は1割に届いていません

 

もうひとつ、知っておいていただきたい数字があります。

文部科学省が、平成18年度に中学3年生で不登校だった人たちを追跡し、20歳になった時点の状況を本人に尋ねた調査(「不登校に関する実態調査」、2014年公表)によると、20歳の時点で正社員として働いていた人は9.3%でした。パート・アルバイトが32.2%、学校にも通わず働いてもいない人が18.1%です。

もちろん、20歳はまだ学生の人も多い年齢です。この調査でも、学校だけに通っている人が27.8%と3割近くいて、ほかに働きながら学んでいる人も19.6%います。ですから、「不登校だった人の9割以上が正社員になれない」という意味ではありません。調査の対象は2006年度に中学3年生だった世代で、今とは状況が違う部分もあるでしょう。

それでも、厳しい結果であることに変わりはありません。そしてこの数字は、不登校をめぐる空気が今ほど「寛容」ではなかった時代のものです。休むことが当たり前に受け入れられるようになった今、この数字が良くなっていく保証はどこにもありません。

不登校だった時期の結果を、最終的に引き受けるのは、ほかでもないお子さん本人です。だからこそ、保護者の方には、この現実を正しく知ったうえで判断していただきたいのです。

 

 

「休む」ことと「このままでいい」ことは、違います

 

誤解のないように申し添えます。私たちは、つらい状態のお子さんを無理に学校へ押し出すべきだと言っているのではありません。

心と体が限界に近い時期には、まず休むことが必要です。長いあいだ家から出られない状態が続いている場合や、医療機関で診断がつき治療を優先すべき段階にある場合は、回復をいちばんに考えてください。そのための選択肢として通信制やフリースクールを選ぶことは、前向きな判断です。

けれども、休養が「回復のための期間」から「いつ終わるか分からない日常」に変わっていないかは、ときどき立ち止まって確かめてほしいのです。休み始めたころと比べて、表情は戻ってきたか。好きなことには元気に取り組めているか。もしそうなら、次の一歩を考えていい時期に来ているのかもしれません。

 

 

今日からできる、小さな一歩

 

いきなり毎日登校を目指す必要はありません。まずは、学校に行っていなくてもできることから始めてください。

ひとつは、朝起きる時間を決めることです。学校に行く日と同じ時間に起きて、カーテンを開け、朝ごはんを食べる。生活のリズムが整うだけで、体と気持ちの調子は目に見えて変わってきます。

もうひとつは、毎日少しでも外に出て体を動かすことです。家族と近所を歩く、コンビニまで買い物に行く、犬の散歩を任せる。最初は10分でかまいません。続けているうちに、歩ける距離も、外にいられる時間も伸びていきます。

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そして、学校とのつながりを切らないことです。放課後に先生と話す、別室に週一回だけ顔を出す、行事の見学だけ行く。全日制の高校へ進む道を残しておくためにも、中学校との細い糸は、できるだけ保っておいてください。私たちが全日制をまず考えていただきたいとお伝えしているのは、毎日決まった時間に人のなかへ出ていく経験そのものが、働く力の土台になるからです。

 

 

ご相談ください

 

不登校・発達障害専門家庭教師ステップでは、学校に行けていないお子さんが、生活のリズムを取り戻し、学習の遅れを取り戻し、もう一度外の世界とつながっていくまでを、ご家庭と一緒に支えています。「休ませていていいのか分からない」「次の一歩をどう切り出せばいいか分からない」——そんな迷いの段階からで大丈夫です。

対面での指導は鹿児島県内、オンラインでの指導は全国にご対応しています。お子さんの今の様子を、まずはお聞かせください。

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出典

この記事を書いた人

甲斐真子(株式会社ステップ 代表取締役社長)の写真

甲斐 真子

株式会社ステップ 代表取締役社長/不登校・発達障害専門家庭教師ステップ

不登校・発達障害専門の家庭教師として、指導歴は10年以上。これまでに指導したお子さんは、1,000名を超えます。鹿児島を拠点に、ご家庭と一緒に、不登校や発達に課題のあるお子様たちを自立と学習の立て直し、小学受験から大学受験、就職活動まで取り組んでいます。対面での指導は鹿児島県内。お子さんのつまずきに合わせた学習アプリの開発、政策も行っています。教育理念は「愛」

カテゴリー: 不登校について

投稿日:2026年10月02日