体験アプリ「がんばってるのに。」——発達に課題のある子の3さいから中3までを、その子として生きる
この記事とアプリは、だれのためのものか
お子さんに「どうして勉強しないの?」と言いたくなったことのある、お母さん・お父さんに向けて書いています。とくに、発達に課題のあるお子さんや、診断はついていないけれど「なにか苦手がありそう」と感じているお子さんの保護者の方を思い浮かべて書きました。
記事の中の体験アプリも、お子さんが遊ぶ学習アプリではありません。保護者の方が、お子さんの側から毎日を見てみるためのものです。
「がんばってるのに。——1億分の1の、ある子の毎日」は、発達に課題のある子の毎日を、その子自身として生きてみる体験アプリです。3さいから中学3年生までを、約10分でたどります。
この記事では、このアプリがなぜ生まれたのか、何が体験できるのか、そして、体験したあとに何を考えてほしいのかをお話しします。
目次
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このアプリが生まれたわけ
わたしはこれまで、たくさんの保護者の方とお会いしてきました。みなさん、お子さんの発達の課題を受け入れよう、理解しようと、取り組んでこられました。
けれど、頭でわかることと、心でわかることは別です。「この子は、こういうところが苦手」と頭では知っていても、その子の目に毎日がどう映っているのかを心で感じとるのは、なかなかむずかしいことです。その子の見え方や聞こえ方は、外からは見えないからです。
それなら、その子の毎日を、少しのあいだ自分で生きてみたらどうだろう。疑似体験をとおしてなら、理解がもう一歩深まるのではないか。そう考えて作ったのが、このアプリです。
保護者の方に、落ち込んでほしいわけではありません。体験したあとに、「いま、自分たちに何ができるだろう」と考えるきっかけにしてほしい。それが、このアプリにこめた思いです。
【無料】何が体験できるのか
アプリを始めると、まず、その子の名前と性別を決めます。お子さんの名前でも、別の名前でもかまいません。
次に、その子が「どんな子として生まれたか」が抽選で決まります。勉強のつまずき方が5通り、言葉・声・体のことが6通り。組み合わせて、30通りのうちのひとりです。もう一度遊ぶと、別の子の人生になります。
●勉強のつまずき方:読み書きが苦手/数の感覚がつかみにくい/気が散りやすく、聞いたことが消えてしまう/理解にじっくり時間がかかる/勉強はできるのに、人の輪から浮いてしまう
●言葉・声・体のこと:言葉がなかなか出てこない/思ったことが強い言葉で出てしまう/言いたい音がうまく作れない/最初の音がなかなか出てこない/まばたきや声が自分では止められない/家ではおしゃべりなのに、学校では声が出なくなる
そこから、家、小学校、中学校と、毎日の場面が続きます。場面ごとに、その子になったつもりで選択肢を選んでいきます。生まれた子によって出てくる場面は変わりますが、たとえば、こんな場面です。
●3さい。青いコップで、むぎ茶が飲みたい。でも、口から出てくるのは「あー!」「ちがう!」「うー……」だけ。
●小学校。指で、まっすぐ線を引いたつもりなのに、画面の線はゆがんでいる。
●小学4年。いちばんがんばったテストが、40点。
●中学生。授業が、お経のように聞こえる。
画面の上には、「じぶんが好き」「イライラ」「つかれ」の3つのメーターがあります。ほめられた回数と、叱られた回数も数えていて、最後に数字で出てきます。
そして最後に、「もしも、まわりにこんなことがあったら」の場面があります。同じ子の人生を、まわりが少し変わった形で、もう一度たどります。
所要時間は約10分。無料で、登録もいりません。スマートフォンでそのまま遊べて、音は出ません。
つらい場面も出てきます。わが子と重なって苦しくなったら、途中で閉じても大丈夫です。診断や評価をするものではありません。
知ってほしいこと——勉強がきらいになっていく理由の一端
発達に課題のある子が、なぜ勉強をきらいになり、やる気をなくしていくのか。このアプリで知ってほしいのは、その理由の一端です。
アプリの中の子は、最初から勉強がきらいだったわけではありません。ちゃんと見て、ちゃんと聞いて、がんばっています。それでも、字はゆがみ、聞いたことは消え、わかりかけたころには、授業は先へ進んでいます。
まわりの大人に見えるのは、「結果」だけです。泣いた。忘れた。40点だった。手が出た。だから、叱られます。その前に本人ががんばっていたことは、外からは見えません。
このアプリの仕掛けは、「こうすればいいのに」と思う選択肢を選んでも、うまくいかないことがある、という点です。正しいと思うほうを選んでも、報われない。それが、題名の「がんばってるのに。」です。遊んでいるうちに、「じぶんが好き」のメーターは少しずつ下がっていきます。最後に出てくる、ほめられた回数と叱られた回数を見ると、毎日がどう積み重なっていたのかがわかります。
勉強をしたくない気持ちは、怠けから生まれるのではありません。がんばっても報われない毎日が、小さいころから積み重なった結果です。
そして、アプリの中の大人たちも、悪者ではありません。お母さんも疲れていて、先生も忙しく、みんな、その子のためを思って声をかけています。すれちがいが起きるのは、その子の見え方や聞こえ方が、外からは見えないからです。
「もしも」から、いま自分たちにできることを考える
アプリの最後の「もしも」では、同じ子の人生を、もう一度たどります。変わるのは、おもに、まわりの大人のかかわり方です。それだけで、同じ子の「じぶんが好き」のメーターが上がり、ほめられた回数が増えていきます。
出てくる場面は、生まれた子によってちがいます。その中からいくつかを、おうちでできることと、学校やまわりの大人ができることに分けて紹介します。
おうちでできること
●伝えたいことを、言葉にしてあげる(3さい)
「あお」と言えずに泣いていた子に、お母さんが絵カードを出します。青いコップを指さすと、「青がよかったんだね」と、言葉にしてくれます。
●点数より先に、がんばりを見る(小学4年)
40点のテスト。お母さんは答案より先に、その子の顔を見ます。「毎日ここまでがんばったね」。
●お母さん自身が、相談できる場所を持つ(小学3年)
相談先で、その子の「見え方」を知ります。声のかけ方が変わり、宿題の夜がバトルにならなくなります。
●好きなことを、強みとして認める(中学2年)
取り上げられていたゲームや絵に、「それ、すごいね」。好きなことが、自信の土台になります。
●責める言葉の奥にある苦しさを、受け止める(中学3年)
「こうなったのは、全部親のせいだ」。その言葉の奥にある、だれにもわかってもらえなかった苦しさを、受け止めます。
学校や、まわりの大人ができること
●その子に合ったやり方で教える(小学2〜3年)
大きいマス目のノートで書く。100mlのペットボトルで1Lを作る。やることは1枚のカードにして、指示は一度に1つにする。わかるまで待つ。
●気持ちを言葉にする手伝いをする(小学5年)
ケンカのあと、先生が間に入って、「何て言いたかった?」と、ゆっくり待ってくれます。
●授業に、少しの配慮をする(中学1年)
指示を紙で渡す。板書は、写真に撮っていい。授業が、少しだけ「わかる時間」になります。
●わかるところまで戻って、学び直す(中学3年)
小学3年の単元まで戻ると、「あ、わかる」。最後には、「ここがわからない」と、自分で言えるようになります。
ぜんぶを一度にやる必要はありません。
体験したあとに、考えてみてほしいことがあります。お子さんの毎日に、いちばん近かった場面はどれだったでしょう。その場面で、これからどう接していくか。おうちで、何ならできそうか。体験した「もしも」を、お子さんの毎日に置きかえて考えるきっかけにしてもらえたら、うれしいです。
アプリの「おわりに」には、こう書きました。「足りなかったのは、本人の努力ではありません。まわりの理解と、その子に合ったやり方でした。」
これは、だれかを責めることばではありません。まわりが少し変われば、同じ子の毎日が変わる。それを、体験で知ってほしいのです。
ご相談は LINE で
体験してみて、「うちの子の場合はどうだろう」「何から始めればいいだろう」と思ったら、LINE から気軽にご相談ください。
この記事を書いた人
甲斐 真子
株式会社ステップ 代表取締役社長/不登校・発達障害専門家庭教師ステップ
不登校・発達障害専門の家庭教師として、指導歴は10年以上。これまでに指導したお子さんは、1,000名を超えます。鹿児島を拠点に、ご家庭と一緒に、不登校や発達に課題のあるお子様たちの自立と学習の立て直しに、小学受験から大学受験、就職活動まで取り組んでいます。対面での指導は鹿児島県内。お子さんのつまずきに合わせた学習アプリの開発、制作も行っています。教育理念は「愛」。
カテゴリー: 発達障がいについて
投稿日:2026年11月07日
